小津、映画のこと

二年程前にTumblrに書いた文章の転載。若干の補筆。

 

世界一の映画に「東京物語」英誌、各国の監督投票 :日本経済新聞  http://s.nikkei.com/RcSmiW 

映画を一番よく見たのは大学生の頃。きっかけは、たしか論理学の授業だった。黒澤明の「羅生門」を取り上げ、「同じ出来事を見た4人の人間がそのことについて話をするが、それぞれの話す内容がまるで違うことについての考察をする」といったような課題が出た。(その課題はもっと学術的な意図を感じる知的な文章で書かれていたが、アホの僕には今その文章が再現できない。)青臭いガキだった僕は「大学教授という権威が評価する映画」というものにとても抵抗を感じていて、いや、アホのくせに賢い大学に入ってしまったコンプレックスなんかもあり、とにかく「どうせそんな映画つまんねーよ」と高をくくっていた。のだが、見てみるとこれがもうめちゃくちゃに面白く、悔しいなんて気持ちも吹き飛び、惹きこまれ、その事をきっかけに毎日のように映画を見始めた。 一番ひどい時は土日にビデオを12本借りてきて寝ずに見続けた。あまり他人とも接触せず、ひたすら映画に没頭していた。

小津安二郎にもその頃出会った。当時は映画の技術のことばかりに気を取られて、話の内容にまで関心がもてなかった気がするけれど。だんだん学校に行くのが嫌になり、映画ばかりを見て過ごした3回生の頃。結局大学を卒業できなかった僕は大きな挫折を味わい、躁状態のようなそれまでの人生は終わった。 そのことに後悔がなかったわけはない。散々悔やんだ。今となっては人間のとる選択はいつも必然であり、あの頃の幼稚な自分にはそれしか逃げ場がなかったのだとなんとなく思っているんだけれど。

 他人の気持ちを理解しようと努力するようになったのはそれから後のことだ。人と関わるごとに、摩擦を味わうごとに、今まで見てきた映画は走馬灯のように思い起こされ、挫折や、苦さや、優しさや、冷たさや、映画のうえで語られたそれらの事柄は、ひしひしと実感を伴って僕の心に触れた。学生当時鼻持ちならない映画オタクを気取っていたつもりだが、結局のところその映画ですらまともに見れていなかったのだと思い知った。自分の人生というものを生きなければ、いくら映画を見たって同じなんだということが少しわかった。そうして20代後半はもうほとんど映画を見ることもなくなっていった。


東京物語を見直してみる。そのローアングル。畳、玄関の土間からゆっくりカメラが動く。小さな日本人を映えさせる知慧。人物がフレームに入る時の構図。そし笠智衆東山千栄子の老夫婦のセリフの一つ一つ。話の筋を知ってから見たからか冒頭からすっかり泣けてしまう。不朽の名作というものが確かにここに存在する。

時が経って、いろいろなことがあって、あらためて映画を見た時にまた何かを発見する。映画に人生を託すようなことはもうないだろうが、しかし、人生のどこかでまた素晴らしい映画に触れてみたいと思った。

無題

午前5時5分前。

 

Brad Mehldau の The Art Of The Trio, Vol. 3: Songs というアルバムの3曲目。

Bewitched, Bothered And Bewildered という曲が流れている。

スピーカーを鳴らすにはまだ早い。

この時間帯は普段ヘッドホンで音楽を聴いている。

耳に音を直接当てると文字が浮かんでこなくて、うまくタイピングできない。

きっと 僕のIQ がそんなに高くないせいだろう。

(IQが高い子は様々なノイズの中ででも勉強ができるという記事を昔読んだ。)

そういうわけで、今日はヘッドホンをワークデスクのフックに引っ掛けて、

そこからこぼれ落ちる音を聴きながらキーボードを叩いている。

 

なんとなく今日は正直に思っていることを書いてみたくなった。

少しだけ自分の本音、というのか。

普段頭に渦巻いてることを少しだけ漏らしてみようかという気分になった。

だから、今回は少し真面目に。

小声で話すような気持ちで書いてみる。

WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)だと言うのにだ。

 

正直な思い。

って、なにかと言えば、

別に珍しい話でもないんだけれど。

僕もただ普通にこの世界に絶望しているっていうことで。

理想を描くとか、未来を想うとか、

そういったことが生きていてまるで頭に浮かんでこない。

なりたいものもなければ、したいことだってそれほどない。

ただ無為に時間を過ごし、

無為

仕事の時間以外はだいたい音楽を聴いてるけど、

まあ、常識的な社会人からすれば、

これはきっと無為と言わざるを得ないのだろうと思ってる、ってことだけど。

皆、成長する為になんらかの投資を自分にしているんだろうが、

僕はまったくそういうことができそうになく、

やる気を起こそうとして何かにとりかかってみても、

だいたいのことはただ虚しく思えていく。

まあ、医者に行くとそういう病気だって言われんだけど、

病気って言葉は本当に便利で。

えらいセンセーにそう定義されてしまえば、

こっちだって病人然として生きるほかはないわけだ。

その身分は楽ではある。

が、その先にもちろん未来はない。

 

話が重くなってきた。

こういうんじゃなくて。

そんな僕でも生きる楽しさが微かにはあるんだっていう、

そんな話をしようと思った。

それって、

口に出すと本当にダサいんだけど・・・。

まあ、正直にって言ったから言おう。

 

それは、人を笑わせたり、喜ばせるってことですね。

それがかわいい女の子ならなおさら。

 

世界に向けてインターネットにおっさんが書くことじゃないんだけど。

わざわざ活字にしてみて、一度プレビューしてみるがアホさしかない。

けれど、ほんとの気持ちってものを突き詰めるとそんな幼稚な言葉が出てくる。

 

ちょっとだけこの話に箔をつけてみるための引用を。

三島由紀夫は言った。

「人間の最も純粋な喜びは他人の喜ぶ顔を見ることだ」と。

 

 

僕は学生の頃はロックとお笑いが好きだった。

テレビはダウンタウン全盛期だったし、

その頃の深夜ラジオは今からでは想像もできないような野蛮さがあった。

人を笑わせることにはストイックなカッコ良さがある。

そんな勘違いを多くの若者にさせていた時代だったように思う。

僕のルーツも間違いなくその時代に培われたものだ。

菊地成孔は「その時代と寝た」という表現を好むが、

僕も結局90年代から逃れられない宿命の人間だろうと思う。

ダウンタウン大喜利をやり尽くし、僕達のようなボンクラ (©宇多丸)は、

意識的であれ無意識的であれ、その笑いのパターンの数々を記憶に刻みこまれた。

 

10代は終わり、多くの人が青春と懐かしむような記憶は僕にはもうあまりない。

20代の半分は地獄で、もう半分は暗闇だった。

30代手前になり、ようやく自我を取り戻しそうになった頃、

音楽とネットを介して、いろんな人に出会った。

チャットをし、通話をし、または直接会う機会もあり、様々な男女と関わるうち、

こんなクズのような自分をおもしろがってくれる人が少なからずいて、

その人たちの血の通った言葉、温もりに触れることで、

絶望はそりゃ晴れ切れるはずはないが、しかし、一縷の光明が差して見えた。

 

僕のコミュニケーション能力というやつは極めて低い。

咄嗟に機転の利く言葉をかけられないし、様々な場面で自分の経験不足を感じる。

暗黒のような人生と薬の作用、副作用の影響もあるだろう。

しかし、くだらないことを言って笑わせることだけはどうにかできたようだ。

笑いがとれる人というのは、コミュニケーション能力が必ずしも高いわけではない。

それでしか人との関わり方を知らないクズである場合も往々にしてあり、

僕がその部類だ。

齢35にもなろうという大男が、まともに人と対峙する術がない。

 

この先何を成そうともいまだに思えないのだけれど、

このまま人生が終わるとしても別段構わない程度の絶望と、

ただ、もしそうであるなら、僕のことを気にかけてくれるわずかな人たちが、

少しでも笑っていたり、喜んでいたりするところが見たいという気持ちと、

なんだかそんなぼんやりとしたことだけしか考えられないまま、

毎日ほとんど記憶を飛ばすように酒と薬を飲んで生きている。

 

気持ちが昂ってきたんだろうか。

書き初めたテンションとはまるで違ってしまっている。

小声で静かに何かを語るつもりだったが、結構ラウドに仕上がってしまった。

話が膨らみきらないままあっちこっちに飛んでしまってるな。

まあ、後で読みなおして赤面するのもいいだろう。

(※ひどく赤面したのでリライト中)

面の皮が厚くなっていくのも構わない。

だんだんバカで鈍重で耐え難いものになって生き残れば。

 

少し思っていることを漏らすのもたまにはいいものだ。

なんのまとまりもないヘタクソな文章でも。

つーか、こんなログを書き留めとくのがブログなんじゃなかったっけ。

まあ、そんなわけで寝ます。

また。

 

 

 

 

 

 

料理してみた 第三回 春野菜のニョッキ (サルサ・ヴェルデ)

こんばんわ。

春も近づいて参りまして、スーパーにも春野菜が並んでおります。

今回はちょっとシャレオツ料理をやってみたいなということで、

緑のソース(サルサ・ヴェルデ)のニョッキを作ってみました。

 

ニョッキ

まず、じゃがいも5つ(500g弱 多かった3つで十分)を皮ごと茹でます。

茹で上がったら皮を向いて裏ごし。僕はマッシャーでつぶしました。

で、小麦粉(100g)、ナツメグ(少々)、塩(少々)、

おろしたパルミジャーノ・レッジャーノ(大さじ2くらい)、と混ぜて

生地をまとめます。丸くまとめたら2センチくらいの棒状に伸ばし、

1センチ幅くらいに切って丸め、フォークで飾り?をつけます。

(わかりにくいので画像こちら)↓

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サルサ・ヴェルデ

ルッコラ(ベビールッコラってのを使いました)、イタリアンパセリ

スイートバジルを数十グラムずつ、にんにく2かけ、

アンチョビ3枚ぐらい(もっと多くてもいいと思う)、

エクストラヴァージンオリーブオイル(オイルはいい物使うとうまいはず)

以上をミキサーにかけてペースト状に。

オイルは少しずつ足すようレシピに書いてましたが、

この加減もミキサーの大きさとか次第じゃないかなー。

ペーストになったら塩、コショウで味を整えてボウルに移しておきましょう。

 

野菜

そら豆は是非使いたい。今回はそれとアスパラを塩ゆで。

冷水にさっとさらして色を止めておきましょう。

グリンピースとか使うのもいいかもしれません。

菜の花なんかも合うかな?

 

調理

ニョッキは軽く塩を入れたたっぷりのお湯で茹でます。

あっという間に茹で上がって浮き上がってくるので、網などで掬う。

ボウルにとったサルサ・ヴェルデにアスパラとそら豆も入れ、

あれば松の実なんかも入れて和えます。

もちろんニョッキを潰してしまわないように。

あとはお皿にそれっぽく盛ってできあがりですw

 

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んー、パルミジャーノをもっと薄くスライスしたかったね。

ちょっとブサイクだわ。

 

バジルやアスパラの見栄えのいいやつは飾り用にとっておきましょう。

チーズグレーターも切れ味イマイチながらダイソーで300円くらいで売ってます。

香草、オシャレ野菜の類はちょっと値が張りますが、

自分で植えると食べきれないくらい生えてきます。

 

休日の暇つぶしがてらの趣味として、

たまにはこんな料理で春の息吹を感じてみるのもよいのではないでしょうか。

 

ご馳走様でした。

では、また。

料理してみた 第ニ回 魯肉飯

今日のお昼ごはんは、でんぱ組メンバーのレシピ本「RISAGOHAN RECIPE」から、「る~ろ~ふぁん」を作ってみました。

 

る~ろ~ふぁん

材料(2~3人分)

 

ごはん

豚バラブロック 300g(僕は220gのを使いました)

焼き豆腐    1丁(小さめのを使いました)

半熟ゆで卵        2個

チンゲンサイ     適量

香菜                     適量(今日は近所のスーパーになかった)

植物油        適量

 

A(以下の材料)

中華スープ                2と2分の1カップ

しょうゆ                   大さじ2と2分の1

紹興酒                       大さじ2

砂糖                          大さじ2

オイスターソース   小さじ1

八角                         2個

 

作り方

1.チンゲンサイはゆでて湯を切り、5cm 長さに切る。豚肉は5mm 厚さの

  細切りにする。豆腐は大きめに切る。

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2.鍋に油を熱し、豚肉を入れて炒め、火が通ったら A を加えて煮立たせる。

  肉に少し味がつくまで中火で煮込む。

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3.豆腐を加えたら弱火にし、煮汁が3分の1量になるまで煮る。

  火を止めて卵を入れる。

  ☆卵は半熟を保ちたいので煮汁につける程度でOK。

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4.器にごはんを盛り、3の肉、豆腐を乗せ煮汁を回しかける。

  チンゲンサイ、半分に切った卵、香菜を添える。

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あまり綺麗に盛れなかったけど、味は満足。美味しかったです。肉もしつこくなく食べれるし、八角の香りが効いてていい。今日は香菜がなかったのがほんとに残念です。彩り的にも味的にもかなりいいアクセントになったはずなんですけどね。

 

ちなみに本の写真がこちら。

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んー、さすが格段にうまそうだ・・・。

 

このレシピもいずれリベンジしようと思うし、他のレシピも試してみるつもりです。

ねむきゅんの本のレシピもね。

ごちそうさまでした。

 

RISAGOHAN RECIPE 通常版

RISAGOHAN RECIPE 通常版

 

 

 

 

 

 

 

3月1日 休日

3月になってしまいました。

まだまだ寒いですが、そろそろ春だなって感じですね。

最近は寝る前なんかにいくつか本をめくっておりました。

まあ、どれもジャズかアイドルか食い物についての本であり、我ながらブレませんが。

 

MARQUEE でんぱ組.inc特集

MARQUEE〈Vol.107〉特集・でんぱ組.inc

MARQUEE〈Vol.107〉特集・でんぱ組.inc

  • 作者: マーキーインコーポレイティド編集部
  • 出版社/メーカー: マーキーインコーポレイティド
  • 発売日: 2015/02
  • メディア: 大型本
  • この商品を含むブログを見る
 

でんぱ組メンバーのインタビューもよかったけど、MV監督のインタビューが面白かった。それぞれの監督にもふくちゃんが一言、二言投げるキーワードがいちいち的確で、もふくちゃんの天才性を皆が指摘している点が目を引く。僕がもふくちゃん信者だからどうしても彼女の言動が気になるだけかもだけれど。はずさない人だなーと思ってラジオも聴いてしまいます。僕は「たぬぴよ」より「アキバノイズ」を聞き逃したくない人です。

でんぱ以外で面白かった記事はゆるめるモ、清竜人25の特集と連載かな。ゆるめるモの田家さんがメンバーにいろんな音源を聴かせて感想を聴く連載がいい。アイドルの女の子にダムドやギターウルフポリシックスを聴かせるって音楽オタクとしてここまで楽しいことはないんじゃないか(気持ち悪い)。清竜人は相変わらずのキモカッコ良さとぶっ飛び方で安心する。笑えるくらい突き抜けた才能っていいよなー。

 

 

RISAGOHAN RECIPE  &   夢眠軒の料理

RISAGOHAN RECIPE 通常版

RISAGOHAN RECIPE 通常版

 
夢眠軒の料理  通常版

夢眠軒の料理 通常版

 

 でんぱ続き。ずっと行きたかったけど、田舎者なのでなかなか行く機会のないディアステージのイベント「りさごはん」「夢眠軒」。そのレシピ本ということで、まあ、言うてもアイドル本だからなと、そこまで期待せずに買ってみたんですが、これが驚くほど素晴らしい出来栄え。どちらの本も本として完成度が高い。僕はお酒や料理が好きなので、料理本も普通にいろいろ買うんですが、普通の料理本(例えばウー・ウェンさんのレシピ本だとか、ケンタロウさんのレシピ本だとか)に比べてもまるで遜色がない。レシピの内容もいいし、フードスタイリングの写真も素晴らしいし、もちろんりさちー、ねむきゅんそれぞれの個性も存分に紙面に発揮されていて、読み物としてもヴィジュアルとしても楽しい。やはりでんぱ組は史上最高のアイドルですよ。僕はオタクとはかくあるべきだと思っていて。妥協をしない、手を抜かない、チープに済まさない、ちゃんといいものを作る。素晴らしい。レシピも普通に試してみようと思います。あ、りさちー推しですが、今回はねむきゅんにやられたなと思ってしまった。これは悔しいがかわいいわ。まあ、でんぱ組は皆最高ということでね。

 

JAZZ 100の扉 チャーリー・パーカーから大友良英まで

いりぐちアルテス004 JAZZ100の扉  チャーリーパーカーから大友良英まで (いりぐちアルテス 4)

いりぐちアルテス004 JAZZ100の扉 チャーリーパーカーから大友良英まで (いりぐちアルテス 4)

 

音楽はいろいろ聴いてきたんですが、20代中盤からは菊地成孔大谷能生両名の影響でジャズに興味を持ち、気づけば30代中盤まで約10年近くも聴き続けています。自分でもここまでハマるとは思っていなかったけれど、例えばマイルスだけ、例えばコルトレーンだけで一生を費やしてしまう人もザラにいるわけで。大変な沼にハマってしまったぞと嬉しくなってしまうあたりがオタクのダメな所であります。

10年聴いたと言ってもまだまだ点と点で聴いていて、とても線で聴いている、大系的に理解できているわけではない。まだまだ入り口にいるなということで、いりぐちアルテスというシリーズから、菊地成孔の200CDという本のジャズ編にも登場され、柳楽光隆さんともイベントをやっている村井康司さんの著書。

「雑味なし、エグ味なし、ナチュラルかつハイグレード。口当たりまろやかにして栄養満点。要するに<フツーに良い>。そんなジャズ批評あってたまるか!というアナタ、間違ってますぞ。そんなジャズ批評が足りなかったんでしょうが。コレ読むとわかります。」

という菊池さんの帯の推薦文とおり。これまでのジャズ批評本ってだいたいハマらないというか、おまえほんとに聴いてんのかよというか、イライラするというか(あっ、それは全部寺島靖国のことだった)。しかし、この村井さんの文章はクリアでナチュラルで、読んでるだけでわかるくらいきっと耳もいい。そこが聴きたかったんだという技術的な話も嫌味なく読ませられ、次々に欲しい盤が出てくるし、持っていた盤は聴きなおしたくなる。昔、青山真治蓮實重彦の文章を、「映画を見る前に読んでも面白いし、見終わってもう一度読んでも面白い。」と評していたけれど、優れた評論の条件はこれに尽きると思う。この本に書かれいてるジャズ評は聴きたくなる文章であり、聴いてから読んでまた面白い文章だ。それぐらいの豊かなものに僕達はもっと触れていかなければならないと本気で思います。本気でぶつかれるものがあるというのはありがたいことだと。

というわけで聴いてなかった盤で入手しようと思うのは、フィル・ウッズ高柳昌行トニー・ウィリアムス菊地雅章山下洋輔等々。昔は付箋なんて貼らずに読んでたんですが、最近は貼ることにしました。パッと再読したいし、ちょっと物忘れも出てきたんでねw

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ま、そんなわけで音楽と本とご飯と。僕の趣味は単純でいいやと思いますよ。

皆さんも何かおもしろい本を読んだら教えて下さい。ではでは、また。

 

追記:dancyuの日本酒特集の本も買ってそのことも書こうと思ってたんだそういや。

   まあ、そちらもいずれそのうち。

日本酒。 (プレジデントムックdancyu)

日本酒。 (プレジデントムックdancyu)

 

 

 

 

旅の思い出 終編

また、しばらく更新ができてませんでした。

ちょっと忘れつつある旅のまとめ後編を。

 

2月14日(土曜日)

昼に起きて宿さんと近所の家庭的な中華料理屋に。日本語の上手な中国系のお母さんと厨房を仕切るお父さん二人でやってるお店。オシム監督が順天堂大学病院(?)に通院してる頃によく来ていたという話も。料理はどれも手頃なお値段ながら結構本格的なお味。まず、餃子、水餃子、雲白肉なんかをいただき、大皿で来るニラレバ、えびマヨなんかもすごくおいしいのに一皿千円もしない。〆にチャーハンまで頼んじゃったけどかなり苦しい量。この日のお昼は飲まないことにしてたけど、ビール飲んでたら食べきれなかったな。宿さんは〆に海鮮おこげまで頼んで、店のお母さんに「そんなに食べるのに細いわね~」と驚かれる。俺はともかく宿さんはたしかに細い。空手やってたし代謝がいいのかな。羨ましい。

 

3時頃までシャワーを浴びなおしてメールやスカイプに返信。静岡のサスケさんが明日代官山にJ Dillaのフィギュア買いに行くんで、その後渋谷でレコード掘らないかというお誘い。日曜の夜は飲み会なので、お昼はサスケさんと渋谷ウロウロして暇を潰すことに決めた。帰る前にCD見て、ジャズ喫茶も寄っておきたいなと思い、ふらっと電車に乗って御茶ノ水に向かう。

 

御茶ノ水ジャズトーキョー。東京でCDを見る時いつも寄るのは、御茶ノ水のここか、新宿のユニオン。今年はピアノより管を聴きたいなーという気分だったので、いろいろと見て回る。新譜も旧譜もやはり人気なのはピアノ・トリオかな。量的には。

結局買ったのは、Alan Hampton「Origami for the Fire」(新譜)、Avishai Cohen Trio「From Darkness」(新譜)、Ambrose Akinmusire「When The Heart Emerges Glistening」(中古。しかしプロモ盤未開封だった。)、Marcus Strickland「At Last」(中古。ピアノがグラスパー。他のメンツもいい。)、Jonas Kullhammar Quartet「Låt Det Vara」(中古。ビートルズ「Let It Be」のパロディ・ジャケ。タイトルもスウェーデンの言葉で Let It Be の意。)、Milt Jackson Quartet「Milt Jackson Quartet」(中古。前々から欲しかった盤が安かったので。MJQのピアノをジョン・ルイスに代えてホレス・シルヴァーというメンツ。)、Ike Quebec「Bossa Nova Soul Samba」(中古。これも以前から好きだったけど持っていなかったもの。先日話した会計士さんも好きだと言っていたのでそれならと購入。)御茶ノ水で買ったCDは以上で1万円程。こういう店に来ると先に予算を決めておかないと無限地獄に陥るのでこの辺で切り上げておくw

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 (友人曰く、わりとよく売ってるらしい宣材盤)

 

東京でジャズのCDを買うとジャズ喫茶で早速かけてもらいたくなる。いつもなら御茶ノ水に寄ると、少し歩いて神保町のビッグボーイというお店に寄るんだけど、このへんのお店は土日閉まっていた記憶。(そうだ、後で寄ろうと思ってたペルソナってカレー屋さんもたぶん閉まってる)どうしようかと思案して、最近柳楽光隆さんなんかが口にするいーぐるというお店に行ってみようと思いつく。御茶ノ水からまたメトロに乗って四谷に。四谷の駅に初めて降り立ったけど、なんだか普通に都会だな。iPhoneのグーグル・マップのアナウンスに従ってお店を目指す。このiPhone握りしめてる感じが実に田舎者丸出しだけど、東京なんてだいたい田舎者がいるところだろという開き直りは既に板についている。しかし、iPhoneができて本当によかった。乗換案内アプリとグーグル・マップがあればだいたいの街は歩けてしまうのだから。3、4分程でお店にたどり着く。地下へと続く細い階段を降り、扉を開けて目の前の光景に驚く。えっ、目の前のこの方は大谷能生さん? ああ、そういえば事前にえふさんに話してたけど、大谷さんがいーぐるでイベントやるのって今日だったのか・・・。講演は既に佳境で、完全に水を差す感じになってしまい、席もいっぱいなので、大谷さんの真後ろのカウンター席に座る。内容はというと、これも奇遇なことに「MJQジョン・ルイスってアレな人」という特集。音楽的にも実にstrangeなことをやっていて、この年代にこんな音楽をやっていたのかと驚いたり、完全な奇人っぷりを発揮していたり、いい湯加減で奥さんとバッハを弾いていたりする音源など。音がかかるだけで笑いが起こるあたり、諸先輩方心得ているというか、ああ、これが東京だなという気持ちになり嬉しくなった。3時間半の講演の最後の1時間にしか立ち会えなかったけど、とてもおもしろかったし満足できた。いい内容だったし、MJQの音源が欲しくなった。

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 (大谷さんの背中。左はいーぐる店主後藤さん。)

 

講演が終わり、皆だんだん席をたって会計を済ませる頃、大谷さんと少しだけ話すことができた。 俺「水曜ウォンテッドの録音全部持ってます!」 大谷「あはは。懐かしいなぁ。ありがとうございます」 俺「愛媛の田舎からでんぱ組を見に来てて、帰り際にふらっと寄ったんですよ」 大谷「えっ でんぱ組ってなんですか?」俺「アイドルですw」 大谷「?? ああ、ああ、そういうことか」

本当は菊池さん大谷さんのラジオでジャズを本格的に聴き始めたこととか、お二人の著作もほとんど読んでいて、特に大谷さんの書いてるものが好きであることとか、大谷さんが書いていた演劇評で興味を持った「再生」という舞台を今度元BiSの子がやるとかいう話を語りたかったけど、なんだか照れもあってアガってしまったのと、他のお客さんも次々話しかけていたのでこれぐらいの短い言葉しか交わせなかった。店を出て駅に向かいながら、あんまり歳も変わらないけど、遥か雲の上の人と思っていた大谷さんとばったり会えて、20台中盤の俺が夢中になって何度も聴いていたラジオとまるで変わらない話しぶりを生で聴けた感動が静かに沸き起こっていた。

 

大谷さんと会えた感動をツイートしたりしつつ電車でホテルに戻る。宿さんと明日のお昼に飲もうと言っていたワインを今夜のうちに開けることに。宿さんのお仕事がだいたい片付く深夜まで待ってロビーでワインを開栓する。1本1万円もするイタリアワイン。ワインは好きだけど、まったく詳しくなくて、俺は聴いたことのない銘だった。昨日デパ地下で買ったチーズやサーモンなんかをつまみながら頂く。ほんとに飲んだことないレベルでおいしかったな。飲んでる時にえふさんが「代々木のスカパーの中継が某所にあがってましたよ」とDMをくれたのは覚えてる。タブレットじゃまともに視聴できないから帰ってから見ることにしたんだっけな。この日も2時くらいまで飲んで自室に戻り、明け方就寝する。

 

2月15日(日曜日)

10時ぐらいに起きると早速サスケさんからスカチャが来てる。もう少ししたら出発して、1時に代官山でフィギュア買うんで、2時に渋谷で、と。じゃあ、昼過ぎに渋谷に着いてご飯でも食べて待っとくことにするか。ということでシャワーを浴びて着替えてメール等諸々済ませて出かける。東西線から九段下で乗り換えて半蔵門線。40分程で渋谷に着くとちょうど一時くらい。食べたいものがまったく思いつかないまま道玄坂の方ウロウロして何軒か知ってるお店を見つけるもなんだか気が乗らず、そういや東京に来る前にけけさんとタイ料理屋行く約束してたなと思いだし、けけさんとは都合がつかなくなった(後で聞いたら50連勤だったらしい。ご苦労様だな・・・。)から一人で食おうと思ってセンター街のタイガーデンというお店に。完全にタイ人の店員に案内されて、ギャルの成れの果てのようなお姉さんと、女子大生っぽい子二人組の間の席に通される。ベタにカオマンガイのランチセットを。

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(渋谷タイガーデン「タイ風チキンライス」)

 

カオマンガイはうまいっちゃうまいけど、飛び抜けたものはなく、味も日本人に合わせてるんだろうか普通に食べやすい味(スイートチリソースはわりと辛い)。トムヤムクンは辛い。ヤム・ウンセン?春雨のサラダも全然普通。タピオカとココナツミルクは半分残した。思ってたほどのエスニック感はなかったかなー。これ1200円はちょっと高いよ。900円にしろ。

 

食べ終わるともう2時を過ぎていた。サスケさんにスカチャしてもメールしても返事ないので電話かけると、ちっちゃい声で「今渋谷のユニオンにいる」とぶつぶつ言うので向かう。ユニオンの地下のフロアに降りてくと、真剣に和物を掘ってるサスケのおっさんが。なんかタイトなレザーのジャケットにブーツで無駄にお洒落だ。「あ、悪い悪い。レコードに夢中でメールとか全然気付かなかったわ。それよりこの猪俣猛のドラムのこれ見てくれよ。こんなのそもそも売ってないし、こんな安い値段もありえねえよ。」と、9月ぶりに会ったけど、まったくいつものサスケさんで安心する。「まあ、しかし掘り出し物はこれくらいだな。うーさん俺腹減ったわ。え?もう食ったの?まあ、とりあえず外出ようか」ということでサイゼリヤに。芋の子を洗うように混んでる日曜日のサイゼリヤで少々待たされて席に案内される。「絶対こんなとこで働きたくないわ」とか言いながら。おっさんは野菜ソースのハンバーグとライスとドリンクバー。俺はワインでも飲めばと薦められたけど、普通にドリンクバーだけ単品で。昨日ユニオンで買ったCDを並べて語ったり、さっきおっさんが掘ってきたレコードを並べて語ったり。傍から見ているとうんざりするような音楽オタクぶりだ。だらだらと喋って俺がトイレに行って帰ってくると、サスケさんが隣の席の若い子連れのお父さんと話し込んでいる。「あれ、どうしたの」「いや、なんかこの人ユニオンで10年働いてたんだって。なんかすげー音楽詳しいの」 どうも、横にいたお父さん現代音楽やってたギタリストでCDまで出していて、ユニオンのクラシック館に長く勤めていたらしい。俺たちと同い年くらいに見えるけど、ひと回り上の46歳。いやーコンロン・ナンカロウがやばくてねーなんて話や、ユニオンの査定の裏話、大物コレクターが亡くなった時の買い取りの話、クラシック館には音大の女の子がバイトにくるけど、だいたい皆クラシックが嫌いだという話なんかを聴く。このお父さんもユニオンの9歳下のバイトを嫁にしてしまったようだ。もう音楽の仕事はしていなくて家業の魚屋を継いで奥さんとやっているらしいが、新年会をスタジオなんかでやると新しいバンドが毎年4つくらいできちゃって遊んでしまう、と。なんだか音楽ファンの理想型というか、成れの果てというか。1時間半ぐらい喋っちゃったかな。帰り際に、「いやーお子さんまだ小さいですね。かわいいなー。」と言うと、「レコード聴いてたら結婚が遅れちゃったんだよ。君らも気をつけてね」と言われる。サスケさんにそのことを言うと「もう手遅れだわ」と。まだまだ時間あるからレコファンも見てこうぜと、まったく懲りずにまたレコードを見に行く。4時から5時半くらいまでいたかなー。レコファンは意外と高い。いいものになるとそれなりの値段がついてるし、どうでもいい盤はずっと前からここにあって動いてないという話だった。それでもサスケさんはまた5、6枚レコードを買っていた。俺はBob Berg, Dennis Chambers, Joey DeFrancesco & Randy BreckerというメンツのCDを1枚だけ。ボブ・バーグが欲しかったんだけど、目ぼしいのはこれくらいで、しかも帰ってAmazon見たらそっちの方が安かったというどうしようもない感じ。まあ、内容は結構よかったのでいいや。俺の7時の神楽坂の飲み会の時間までもう少しだけ時間があるのでドトールに寄って少しだけ話す。結局この日のお茶代は全部サスケさんが出してくれた。ありがと。

 

渋谷から神楽坂へは半蔵門線で帰ってまた東西線。神楽坂に向かっていると宿さんとどかんから少し遅れそうだと連絡が。しかし、神楽坂の駅に降りると後ろから肩を叩かれて、振り向くと宿さん。同じ電車だった。そのまま神楽坂のお店に。程なくティティさんといういつも俺たちなんかと飲んでくれる稀有な美人さんから先に着いたと連絡がくる。ちょっとわかりにくいお店で、ティティさんに電話かけて出て来てもらって席につく。「白金 酉玉 神楽坂店」という焼き鳥のお店。自分で選んどいてなんだがシャレオツだわ。どかんはいつものことながら遅刻なので、3人でとりあえず生。お通しの野菜スティックをかじりつつ、まずは刺し身でも。しかし7時に来たのにもう白レバーは売り切れで刺しも焼きもない。ささみの酒盗和えと鶏生ハム、串は血肝を頼んでおく。この御店の焼き鳥は内蔵だけでも10種類は超えてたかな。30分程でどかんが着いたので、俺が外まで迎えに行ってやって4人揃って乾杯。串を7、8本程頼む。ソリレース、アキレス、つくね、銀杏・・・えんがわは頼んだっけな?聴いたこともない珍しい部位ばかりで選ぶのに迷う。他はもう覚えてないw けれど、どの串もおいしかったし、揃えてある日本酒もこれまたおいしい。ちょっとだけ高いけどね。久しぶりに会ったティティさんは上機嫌で、いつもながらお酒強いなと思いつつも、今日のピッチは速すぎだろと驚く。「うーちゃんお肉おいしいから焼きたてで食べてね」って、串を食べるのも速いw この店で飲んだ酒屋の女房の盗み酒というのがおいしくて、調べたらこれ愛媛の梅錦の酒で地元も地元。しかし、この辺の大きな酒屋でも見たことがない。うまいものは全部東京に行っちゃうんだよとフォロワーさんが言ってたけど、「まさに」という感じ。

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(夢中で飲み食いしちゃって写真撮れてない)

 

2時間までということで9時に外に出る。おいしかった。女の子とならまた来たい。男だけだとちょっともったいない店だw いい具合になってるけど、ティティさんが「二軒目行こう!」というので駅までに見つけたお店に入るかと歩いてく。この日は風が強くて皆で寒い寒い言いながら歩いてく。日本酒の店とピッツェリアがあった。二軒目はワインにするかとピッツェリアに。店入って俺トイレ行ったんだっけな?席につくともうオーダーは終わってた。(若干記憶曖昧)マルゲリータとシーフードのマリネ。最初ビールだったっけ。あれ、1本目の赤は俺が選んで軽くていまいちだったな。まあ、俺がそんなんだから皆も結構酔っちゃってる。2本目の赤を宿さんが選んでもうデザートなんかも食べちゃって。

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(金も持ってないのに二次会までついてくる奴~)

 

最後のワインは若干飲み残してそろそろ終電。ティティさん完全に千鳥足なんだけどもw で、駅に着いたもののティティさん横浜まで帰れそうにないから宿さんとこのホテルに泊めることに。ここ5年くらいだいたい半年ごとに飲んでるけど、ここまで酔ってるのは初めて見てちょっと心配になった。もちろん何もやましいことはせずに皆寝る。

 

2月16日(月曜日)

朝起きてティティさんを見送った後、宿さんと東京で最後のご飯は近所のインドカレー屋さん。ここも何度か寄ってるな。この一週間飲みまくった体にインドカレーターメリックが効いた気がした。部屋に戻って荷物をまとめて駅に。宿さんが駅まで送ってくれる。ほんとに恐縮だ。ゆっくりと成田まで行く間いろんな音楽を聴いて感慨にふける。この帰りの時間がいつもしんみりとするんだよなー。誰だってそうだろうけど。

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(成田空港ではいつもここのカフェのアイスティー一択)

 

5時前に離陸して7時前に松山に着く。濃すぎる一週間だった。そして飲み過ぎ食い過ぎの一週間だった。東京でお会いした皆様本当にありがとうございました。これに懲りなければまた遊んでください。

 

ではでは、長くかかった旅行記もこれでおしまいです。